クラッシュコース 第八章 『中央銀行によるお金の創造』

この文章は、クリス・マーテンソン氏による『クラッシュコース』第八章 『the Fed – Money Creation』の翻訳です。 – 目次はこちら

それでは、お金が創り出されている場所へ行きましょう。お金の創造プロセスは以下のように進みます。

米国議会が、現在所持しているよりも多額のお金を必要としていると仮定します。確かに、そんなことが起こるとはあまり考えられません! おそらく、歴史的なバカげた行為のために、たとえば減税をしながら同時に2つの戦争を遂行するため、国庫が空になってしまったのだと仮定します。さらに、議会は実際にまったくお金を持っていないものとします。そのため、財務省を通じて追加予算獲得を要請します。

さらにありえないことですが、財務省もその日暮らしの生活をしており、数週間程度に必要な額以上、即座に捻出できる資金を持っていないとします。

そこで、財務省は現金を募るために債券(国債)の束を印刷します。アメリカ政府は、国債を用いてお金を借りることができます。国債には”額面価格”、つまり国が販売する際の価格と、債権の所有者に支払われる利率が定められています。たとえば、もし100ドルの額面価値と年率5%の利率を持つ債券を買うとすると、最初に100ドルを支払い、一年後に105ドルを受けとることができます。

国債は、定期的に開催されているオークションで販売されます。大部分の国債は、他国の大銀行によって購入されています。近年では、中国や日本の銀行です。これらの国の銀行は合衆国国債をオークションで購入し、その代金は財務省の国庫に送られます。そうして、政府の一連の政策計画のために国中に再配布されるわけです。

以前に、お金の起源を説明すると約束しました。しかし、これまでのところはお金の起源を説明できていませんね。今挙げた例では、既に存在するお金で国債を購入しているからです。お金が創り出されるのは、次のメカニズムです。つまり、連邦準備銀行が銀行から国債を購入するところです。

連邦準備銀行は、以下の手順を実施します。連邦準備銀行は、他の銀行が持つ国債と同額のお金を交換して、国債の所有権を受けとるのです。

それじゃあ、どこからこのお金が生じているんだ? ご質問ありがとうございます。お金は「真空中から創り出される」のです。連邦準備銀行が負債を「買う」とき、お金は創り出されます。連邦準備銀行によって創造された新しいお金は、常に銀行の負債と交換されます。ですから、このページの頭にタイトルを書いておきましょう。『全てのドル[1] は、借金によって創り出される。』

信じられませんか? 連邦準備銀行による『Putting it Simply』というタイトルの本から引用しましょう。
「我々のような一般市民が小切手を書くとき、銀行口座に小切手を支払うための資金が存在しなければなりません。しかし、連邦準備銀行が小切手を書くときには、後で支払いが引き落とされる銀行口座などというものは存在しません。連邦準備銀行が小切手を振り出すときには、お金を”創り出して”いるのです。」

何という巨大な力でしょうか! 一般市民がお金を稼ぐためには、労働をして、しかもお金を成長させるためにリスクのある投資をしなければならないのに、連邦準備銀行は望みのままに、いつでもお金を印刷することができ、それをアメリカ政府に貸しつけることができるのです。しかも、利子つきで。

先に述べた通り、3800以上の紙幣(と金属製の貨幣)が誤った管理によって価値を減じているのですから、中央銀行がお金の量に対して責任のある行動を取っているか注意深く監視するのは、理にかなったことだと言えないでしょうか?

これまでに、お金が創り出される2つの方法を解説しました。

1つ目は、銀行の信用によるものです。図から分かるように、この場合は借金を通してお金は出現します。 銀行の信用によって創り出されるお金は、創り出されたお金と同額の、新たなお金を相殺する借金と同時に出現します。また、借金に対応する利子が支払われなければなりません。

2つ目のタイプは、真空中から印刷されるお金です。そして、図の中のこの段階で起こるということを学びました。

お金が創り出される過程は、とてもシンプルなので、逆に納得しがたいものです。ですから、内容を理解するまでに何回かこの章を見返す必要があったとしても、心配しないでください。私のセミナーに4回以上参加して、ようやくこの考え方が腑に落ちたと言う人もいるくらいですから。

しかし、この章の全てを理解し、納得できたとしたら、おめでとうございます! 自分を認めてあげましょう。これは本当に難しい考え方なのですから。

ここまでのお金に関する知識を使って、きわめて重要な2つのキーコンセプトを主張することができます。

最初のキーコンセプトは、全てのお金は借金によって裏付けされているということです。地方銀行のレベルでは、全てのお金は借金によって出現します。国家の中央銀行のレベルでは、お金はただ単に無から生み出され、利子が支払われる政府負債と交換されます。いずれにせよ、お金は借金によって裏付けされています。しかも、利子が支払わなければならない借金です。

このキーコンセプトから、本当に重大な結論を導くことができます。毎年、最低でも、過去の借金の利子を支払うだけのお金が貸し出されて、新たなお金が創り出される必要があるということです。

言い換えるなら、毎年毎年未払いの負債の総額は、最低でも借金金利と同じ比率で複利で増加していく、ということが言えます。毎年借金の額はいくらかの割合で増えていきます。借金を元にしたお金の制度は、常に一定の割合で拡大します。つまり、お金の制度は、そもそもの設計からして指数的に増加するシステムなのです。必然的に、社会全体での借金の総額は、社会に存在するお金の総額を常に上回ります。

私は、この制度について判断を下すつもりはありませんし、それが善いものだとか悪いものだというつもりもありません。単に、現在の制度はこのようになっているというだけです。しかし、経済制度の設計を理解すれば、経済制度に起こりえる結末が不可知のものではなく、制度自身の制約によって限定された結果を取るだろうと予測できます。

今までに述べたことから、4つ目のキーコンセプトを導くことができます。絶え間ない拡大は、現代の銀行制度の必須要件である。ここには法則があります。ある年における未払いの利子を支払うために、毎年最低でも同額の新しい信用(借金)が創り出される必要がある、ということです。マネーサプライの継続的な拡大が無ければ過去の負債を支払うことができません。そうでなければ、借金の踏み倒し(デフォルト)がシステム全体に広く波及し、その結果、お金の制度が破壊されてしまう可能性があります。デフォルトは、負債を基盤としたお金の制度のアキレス腱です。これは、地方銀行について前の章で説明した通りです。そのために、私たちの社会のあらゆる公的・政治的な制度がデフォルトを避けるように設計されています。

ですから、銀行制度は常に拡大し続けなければなりません。それが、善い(または悪い)ことだからというわけではなく、単にそう設計されているというだけです。自動車のエンジンがガソリンを使うのと同様に、制度の設計なのです。藁を燃やして自動車を走らせることができたらいいのにと思ったとしても、それを試すのは時間の無駄です。なぜなら、自動車エンジンはそのように設計されていないからです。

継続的な成長の必要性を理解すれば、この先何が起こるのか、そして、未来の可能性を変化させる有意義な行動を取るには何をすれば良いか、状況を理解した上で判断を下す準備ができます。

根本的には、限りある地球上に存在している、永遠に拡大しなければならないシステムの長期的な生存可能性を検証しなければなりません。重要な問題は「経済がもはや成長しなくなったとき、現在のお金の制度を安定した公平で有用なものに変更することができるだろうか?」ということです。

そこで質問します。「そもそもの設計から永続的に成長しなければならないお金の制度が、地球の物理的な限界へ向けて全力で突進していったら何が起きるだろうか?」

更には、私は自分の人生の中で経済が物理的限界に衝突する瞬間を目撃することになるだろうと確信しています。そして実際、衝突は既に発生しています。私は、全ての結末がどうなるかに非常に強い関心を持っています。

本当に真剣に考えなければならない巨大な問題です。そして、この問題は、興味深いどころか恐ろしいことではないかと考える人もいるでしょう。確かに、過去の経験にもとづいて考えるのであれば恐しいことかもしれません。しかし、未来についてもっと柔軟に考えられるのなら、どのような未来が実際に訪れようとも、現在存在する可能性を最大限に利用することができるのです。今の時代は、魅力的で、元気の出る、本当にかつてない時代です。そして、私は個人的にはこの時代を、この場所で、みなさんと一緒に生きられることに興奮を感じています。

次の章では、私たちのお金制度の歴史的背景を検証したいと思います。現行の経済制度は、高度に進化した傑作であるのか、それとも37年しか経過していない歴史的には短期間の実験であるのか、確かめてみましょう



脚注

  1. 訳注: 前章の繰り返しになりますが、ドルに限らずほぼ全ての国の通貨は借金から生じます。 []