クラッシュコース 第四章 『複利という問題』

この文章は、クリス・マーテンソン氏による『クラッシュコース』第四章 『Compounding is the Problem』の翻訳です。 – 目次はこちら

この短いプレゼンテーションで、みなさんに複利の力を理解してほしいと考えています。もしも何かの量、例えば人口、石油需要、マネーサプライでも何でも、がある時点での全体の量に対して常に一定の割合で増加していくならば、その量を描いたグラフはホッケースティックの形になります。

もっと簡潔に言うと、何らかの量が一定時間毎に一定の割合で成長していくならば、その量は指数的に増えていくと言えます。

ここでは、アルバート・バートレット博士による素晴しい論文で使用された例を用いて、複利成長の力を説明しましょう。

ここに不思議な力を持ったスポイトがあるとして、みなさんの左手の真ん中に一滴の水滴を落とすとします。不思議な力というのは、このスポイトから落とした水滴は1分ごとにサイズが2倍になるという点にあります。

最初は何も起こっていないように感じるでしょうが、1分後には小さなしずくは2倍のサイズになります。もう1分後には、10セント硬貨の直径[1] より少し小さい程度の水のかたまりが手の平の上に現れます。6分後には、裁縫用の指抜きを一杯にするくらいの水量になります。

さて、この魔法のスポイトをフェンウェイ球場[2] に持っていき、そしてお昼の12時ちょうどに球場のピッチャーマウンド上で一滴の水のしずくを落とすとします。

問題を面白くするために、球場は防水性であり、しかもみなさんは外野席の最後部に手錠で拘束されているとしましょう。

ここで質問です。「手錠から抜け出すために、どれだけの時間が残されているでしょうか?」
球場がすっかり水没するまでの時間はどれだけあるでしょうか? 数日、数週間、数ヶ月、それとも数年? 一体どのくらいの時間でしょうか?

しばらくの間、みなさんも考えてください。

答えは、同じ日の12:49までに手錠から抜け出さなければならないのです。ほんの小さな水滴が、フェンウェイ球場を50分もかからずに完全に水没させてしまうのです。

ここでみなさんに質問です。– 球場にまだ93%の空きが残っている時刻はいつでしょうか? そして一体どれだけの人が問題の困難さを理解できているのでしょう?

答えられますか? まだ球場に93%の空きがある時刻は、12:44です。みなさんが球場の外野席で身悶えしながら助けを待っていて、球場の水深がせいぜい1.5mくらいのときには、逃げるために残された時間はたった4分しかありません。

そして、これこそが複的成長の重要な特徴であり、みなさんに一番お伝えしたいことなのです。指数的な成長をする量は、最後の最後の瞬間だけに加速が進みます。

45分間、外野席のシートに座っていても何も起こっていないように見えます。しかし、最後の5分間で… バン! 全体が一杯になります。

この例は、アルバート・バートレット博士による素晴しい論文を下敷きにしています。博士の論文は、正確にはっきりと複利のプロセスを説明しており、このサイトの必読書リストでも取り上げています。バートレット博士は、「人類の一番の欠点は、指数関数を理解する能力に欠けていることだ。」と述べています。私もまったく同意見です。

複利成長を理解すれば、私が感じている緊迫感を理解していただけるでしょう — 指数関数の「曲り角」にさしかかった時点で、もう何か手を打つ余地は残されていないからです。時間はますます短くなります。

ですから、「複利」はクラッシュコースの最初のキーコンセプトです。では、一体複利がお金と経済と私達の未来にどう関係するかをお伝えしなければなりませんね。それでは、第五章に進みましょう。

ご静聴ありがとうございました。



脚注

  1. 訳注: 約18mmで、1円玉の20mmより少し小さい []
  2. 訳注: ボストンレッドソックスの本拠地 []